「私のタイムカプセル」
掘り進むその横にはプラスチック製の大きなケースが一つ。
先日卒業した私達が、思い出を残すために作ったタイムカプセルだ。
カプセルの中には、めいめい持ちよった様々な物が納められている。
埋められたら、次に顔を出すのは十年、二十年先の事。
私がカプセルの中にいれたのは一通の手紙。
四年の時初めて好きになった男の子に渡そうと思って書いた、生まれて初めてのラブレター。
だけど、その恋はあっけなく終わった――というよりは始まりもしなかったのだけど。
その男の子にはもう好きな子がいて、その子の机に手紙を入れた直後にそれが分かった。
そして手紙は、その子の目に触れることなく私の元に戻ってきた。
ほろ苦い思い出。手紙を見るたびに私の心は張り裂けそうになる。
だからこれは一種の封印。淡い恋の痛い記憶を忘れるための。
「よし、埋めるぞ」
みんなに呼びかけたのは、私が初めて恋をしたあの男の子。
その声が合図となってカプセルは地中に埋められていく。
このカプセルが掘り出されるとき私は、そしてみんなは――あの子は何をしているだろう。
そんな先の事は今はまだ分からない。
だけど私達は確実に大人になって、社会の一員になる。それだけは確か。
その頃には、この手紙に込められた思い出を笑い話として話せるようになっているだろうか。
シャベルの音だけが校庭に響く。
眠れ、私の初恋よ。この“痛み”が“思い出”に変わるその時まで。
<あとがき>
ちょっと切ない、だけど前向きな恋のSS。
失恋もまた糧になれば……いいですけどね。(ぉ