「ロード」


 眠っているように見えるそいつの横顔をそっと覗く。
 つい一時間前まで俺はこいつと話してだんだよなあ。
 そう思うと、なんだかしんみりしてしまう。

 もう何年のつきあいだっけ。長すぎて忘れてしまった。
 いつのまにかそばにいることが当たり前になっていて、存在の大切さを忘れていた気がする。
 いつだって何もいわず俺を慰めてくれて、いつだって何もいわず俺に寄り添ってくれていた。
 失って初めて分かる、こいつの存在の大きさ――。
 何で今まで気づかなかったんだろう。いや、気づけなかったんだろう。
 倦怠期――ひと言でいってしまえばたった二文字の簡単な単語。
 だけどそれは、言葉では言い表せないような、難しい感情の葛藤。

『何でもないような事が 大切だったと思う』
 昔好きだった『ロード』の歌詞がふっと頭に浮かぶ。
 全くその通りだな。よく言ったもんだ。
 なんとなくまた『ロード』聞きたくなってきた。
 久しぶりにレコードショップに行ってみようかな。
 おっと、その前に――。

 ガチャッ。 ブーーン――。
 電子音とともにランプが点滅し、バッテリーの充電が始まる。
 やれやれ、ここのところ忙しかったとはいえ、充電してやるのを忘れていたとは。
 これだから俺は女と続かないんだろうな。
 目の前で静かに目覚めを待つのは、もう何年も前に買った犬型ロボットAIBO。
 帰って来る頃には充電も終わって、またいつもどおり尻尾を振っている事だろう。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 30歳独身一人暮らし男のちょっとイタいオチなSSです。
 AIBOも結構古いし、管理人の年代がバレそうですな。(笑爆)


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