「眠らない夜」


 また夜がやってくる。静けさと闇の支配する夜がやってくる。
 夜は大切な人たちを目の前から連れ去っていく。
 夜を憎み、夜の闇をじっとにらみつける。それがただ一つの日課。
 夜が目の前から大切な人を連れて行かぬように。
 目の前から大切な人が消えるのは嫌だから。
 悲しい想いをするのは嫌だから。
 だから目をそらさずに夜を見張る。何があろうとも。
 そのうち夜は真っ黒な口を開けて目の前を包み込む。
 星も、月の光さえも届かぬ真っ暗な闇が視界を覆い隠す。
 そして夜は惑いを与うるべく、幻を見せる。
 つかの間浮かぶ幻で無垢な心を懐柔し、また大切な人を連れ去ろうとする。
 流されてはならない。屈してはならない。
 夜の思い通りになるのはまっぴらごめんだ。
 一つ、また一つ、幻を振り払い世界を閉ざす漆黒のとばりをこじ開ける。
 “眠らない夜”を超え、再び世界に光が灯(とも)る。
 護りきった。だが、安堵はただ一瞬(ひととき)の休息に過ぎない。
 再びめぐる夜に備え、牙を研ぎ、神経を張り、備えなければならない。
 夜はその手を休めることなく襲い掛かろうとするのだから。
 今目の前にいる大切な人を守るため。
 今日も“眠らない夜”の戦いは続く。 


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 小さい子供って、意外とこういうことを考えてそうかな、という感じで書いたSSです。
 かわいらしさが出ていればいいなあ、というところですかね。w


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