「魔王」


 人間たちは彼の事を“魔王”と呼んだ。
 魔王の家は深い森に囲まれた山の中の大きなお城。
 魔王は争いが嫌い。その家で静かに暮らしたかった。
 だけども、人間たちはそれを許さなかった。
 毎日のように家には“勇者”と名乗る人間たちが押しかける。
 勇者は決まって魔王に言う。
「出て行け。この世界から出て行け」
 なぜ?魔王は何も悪い事はしていないのに。
 魔王は人間ではないから?
 でもこの世界に人間以外の生き物はたくさんいる。
 なのになぜ魔王だけ?
 魔王は勇者たちを退けなければならない。
 そうしないと自分が殺されてしまうから。
 そして人間たちはまた、魔王に憎しみを募らせる。
 そして魔王はますます悪者になり、ますますひとりぼっちになっていく。
 魔王は毎日泣いていた。どうして自分は魔王なのか。
 なぜ自分は魔王に生まれなければならなかったのか。
 どうして。なんのために。
 自分は人間に生まれたかったのに。みんなと友達になりたかったのに。
 魔王は今日も一人泣いていた。
 ある晩とうとう、魔王は家の屋上から飛んだ。
 家の裏に広がる深い深い谷に向けて。
 今度生まれ変わったら人間になれるように。
 人間になってみんなと遊べるように願いながら…。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 ゲームの中では存在し得ない、心優しい魔王がいたらどうだろう。
 そんな想像で書いたSSです。
 最後がかなり悲劇になってしまってますが。^^;


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