「ケンカはやめて!」


 最近パパとママは顔を合わせるといつもケンカをしている。
 それも決まって優(すぐる)がベッドに入った後だ。
 パパもママも気づいていないと思っているのだろうけど、優はとうに気づいていた。
 というか、あんな怒鳴り声が聞こえれば嫌でも目が覚めてしまうからなのだけど。
 また怒声が飛んできた。優は思わず身をすくめた。
 怖い――。ケンカ自体が怖いんじゃない。怖いのはパパとママがあんなにお互いをののしりあえる事、そして憎みあえる事。
 けんかが始まると、優はそっと二人の様子を見に行く。
 そしてすぐに怖くなって自分のベッドに潜り込んでしまう。
 だけど、どんなに頭から布団をかぶって丸まっても、怒鳴りあう声はそれを突きぬけて優の耳に届いてくる。
 このままでは、パパとママに“あのこと”を訊かれるのもそう遠い未来ではないだろう。
『パパとママ、どっちについて行く?』
 それは優が一番訊かれたくない事。一番答えたくない事。
 だってそれは、家族が家族でなくなるという事。
 パパがいて、ママがいて、優がいる、たった三人の家族がバラバラになってしまうということだから。
 多分パパとママは優がこんなにもおびえている事を知らないんだろう。
 だけど思いだして欲しい。
「もう、ケンカなんてやめてよ!」
 そう言いたくても言えない者がいる事を。
 二人の背中を悲しげな瞳で見つめる、優という“家族”がいることを。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 親のケンカをはたから見てる子供の気持ちってどんな感じなのかなあ、という思いつきで書いたSSです。
 世のケンカ中の親達にぜひとも読んでもらいたいものです。−w−


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