「願い事」


 目の前にはこうこうと光を放つパソコンのモニター。
 画面に流れる無機質な文字の羅列と向かい合い、ただ無造作にキーボードをたたく。
 友達といえば、モニター越しの顔も知らない誰かだけ。
 何で自分はこんな生活をしているのだろう。 
 思えば昔から、そう幼稚園の頃から内気で引っ込み思案な性格で。
 みんなが遊んでいるそのそばで、「いれて」のひと言がいえなくていつも独りだった。
 気がつけば小学校、中学校とずっと独り。
 高校は知り合いのいない私学でやはり独り。大学ではますます孤立し結局中退。
 そして現在は仮想の空間だけが安息を得られる唯一の場所。
 昔漫画で見た事のある、一つだけ何でも願い事のかなう宝の玉。
 もしそれが本当に存在して今目の前にあるとしたら。
 そしたら、宝の玉に願いたい事が一つある。
 仮想の空間に引きこもりながら、ひそかに思い続けていた事。
 もう一度“あの頃”に戻りたい――独りぼっちだった幼い頃に。
 そしてもし“あの頃”に戻れたなら、あの時踏み出せなかった一歩を踏み出したい。
 勇気を出して「いれて」の一言を言いたい。
 そして“独りじゃない自分”になりたい。
 そうしたら――今とは違う自分がいるかもしれない。
 たくさんの友達に囲まれて、全然違う人生を歩む自分が……。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 何気にちょっとノンフィク入り気味のSS問題作です。
 書いてて軽く自己嫌悪に陥りそうになりました。^^;


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