「初めてのハジメマシテ」


 シワシワでへちゃむくれで、なんだかお猿さんみたい。
「大我(たいが)もこんなだったのよ」
 って、ママは言うけど、正直ボクには想像できないよ。
 目の前にいるのは、それくらいすごい顔。

 胸の中はなんだかフクザツな気持ち。
 これって、嬉しいのかな?
 それともやっぱり、今までボク一人の物だったママとの間に突然現れたコイツに、テキイを持っているのかな?
 どっちの気持ちが本当なのか、今のボクには分からない。
 それくらい心の中はフクザツカイキ。
 でもこの胸のドキドキはなんなんだろう。
 おゆうぎ会で舞台の上に立った時の感覚に似たドキドキ。
 ひょっとして緊張してる? なんで?
 ワケはわからないけど、とりあえず目の前のオマエに言っておきたい。

 ――ハジメマシテ。
 これからは、オマエはボクの弟で、ボクはオマエのお兄ちゃんだ。
 なん年もなんジュウ年も、長い長いツキアイになるだろう。
 だけどママはボクの物だぞ。ボクがいるときは絶対に渡してやらないからな。
 それだけは絶対にゆずれないもんね。
 そんなわけでひとつ、これからよろしく、弟よ。

 保育器の中で綿ボコリみたいに小さな手がピクリと動いた。
 ちゃんと聞こえたのかな? ボクの“初めてのハジメマシテ”。
 しわくちゃの顔が、少しほほえんだみたいに見えた。
 ――こちらこそヨロシク。
 なんとなくそう言われたような気がした。
 小さな手、小さな足、小さな体、小さな顔。小さな命がそこにある。
 目の前にいるのは、生まれたばかりのボクの弟。
 名前は風我(ふうが)。初めて逢う、ボクの弟。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 これまた子供ネタ。
 ちっちゃなお兄ちゃんが、初めて生まれたばかりの弟と顔を合わせている情景、ですね。
 自分には記憶がないので、こんな感じなのかなあ的観点ですが。^^;


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