「堕ちた世界の中で」
灼けた大地と崩れた建物の残骸のみが広がる荒廃しきった世界があった。
かつてその世界は美しい水と緑に囲まれ、豊かな土地の広がる世界だった。
しかし、心ない者達とそれに抗う者達の醜い争いが長い間続き、豊かだった世界は荒廃していった。
人の心は荒み、略奪と暴力が世界を支配していた。
そんな荒れきった世界の中でも、子供達は変わらずたくましく生きぬいていた。
少年は建物の残骸の間をぬい、わずかばかりの食料を抱えてコロニーを目指していた。
コロニーでは、少年よりも幼いたくさんの子供達が暮らし、食料を持つ少年の帰りを待っている。
少年は足早に進んでいく。地上ではいつ何時何が起こるかわからない。弱い者はたちどころに喰われてしまう世の中なのだ。
その時、前方の建物の方から足音が聞こえてきた。粗末な靴の音ではない。よく手入れされた底の分厚い革靴の音だ。
少年は身構えた。上等な靴をはいた人間などこの世界には数えるほどしかいない事、そしてその主が危険な存在であることを少年は知っていたからだ。
靴音の主がゆっくりと建物の影から姿を表す。
少年はきびすを返して逃げようとするが、その左足を撃ち抜かれその場に倒れこんでしまう。
サブマシンガンを携え、迷彩の軍服に身を包んだ男がニヤッと笑ってこちらを見ている。
少年は青ざめて痛む足を引きずりながらその場を離れようとするが、その身体を容赦なく銃弾の雨が撃ち抜いた。
その間わずかに数秒。少年は一瞬のうちに物言わぬ屍へと変わった。
この一帯は争いの発端となった者達の支配する血塗られた地域。進入した物は容赦なく撃ち殺される。
もし争いが起こらなければ、この世界は美しくそして平和が続いていただろう。
だが、もはや元の姿に戻る事はできないだろう。
その世界から逃れてきたある者は言う。
『争いは滅びの未来しかもたらさない』と。
<あとがき>
一応舞台は戦争で滅びた世界、ということで。
ケンカはロクな未来を産まないよ、という警鐘的SSのつもりで書きました。