4000HIT記念SS 名探偵コナン二次創作小説「チェンジ・オブ・パニック(SS版)」
「なっ、なんじゃこりゃあ!」
思わず叫んでしまった。目の前には見覚えのある顔。一瞬東南アジアの人間かと見間違いそうになるような色黒の顔。
もう一度なでまわしてみる。次に夢じゃないのか、と頬を思い切りつねってみる。
――やっぱり痛い。
「って、コラ俺の顔になにさらしとんねん!」
足元から甲高い関西弁が聞こえてくる。
そこにいるのは本来それが自分の顔であるべきはずのちっこいメガネっ子。
「おい工藤、一体どないなっとんねん!」
「訊きたいのはこっちの方だっつーの!」
会話中なのはもちろんコナンと平次。
ただし、どういうわけか中身が入れ替わっている。コナンが平次で平次がコナン。
――なんだかややこしい。
昨日用事の帰りだとかで平次と和葉がやって来て、それからコナンと蘭と小五郎をくわえた五人で食卓を囲んで、それからごく普通に床についたはずだ。それなのに――。
「こういう時こそ、お前の得意な推理の出番やろ」
「推理以前に普通はありえねえだろ。――っつーか、それを言うならお前だって“西の高校生探偵”じゃねえか」
「えっ? 俺はフツーの小学一年生やでぇ?」
「――ケンカ売ってんのか?」
コナンのかわいい声でおどけて見せた平次に、コナンは思わずドスの聞いた平次の声で言った。
「冗談やがな、冗談。そないに怒んなや」
「ったく、冗談なんかいってる場合かよ。蘭や和葉姉ちゃんに見つかったら、シャレにならねえぞ?」
「まあ、当面バレンようになりきるしかあらへんな」
「ちょっと待て、“なりきる”って――!」
平次はニッと笑って言った。
「もちろん俺は工藤のふりを、お前は俺のふりをすんに決まっとるやないけ」
コナンは大きなため息をついたのであった。
しかし、現状何がどうなってこうなったのかや、どうすれば元に戻るのかが分からない以上、そうするしか手はなかったわけで――。
ようやく長い一日が終わった――。
お互いヘトヘト、もう話す気力もないくらい疲れている。
夕食もそこそこに、二人は泥のように眠り込んでしまった。
そして静かに時間は流れ、やがて夜が明けた――。
鏡の前にはいつもの通りのコナンの顔がある。
念のため頬をつねってみる。
――やっぱり痛い。
「――夢か」
そう呟いたところに平次が現れた。
「おう工藤、おはようさん」
そういって、平次はコナンの隣に立つ。
「そういや、昨日はけったいな夢見たで。俺が工藤の姿になってもうたんや」
平次のその言葉に、思わずコナンは咳き込んだ。
その様子を平次はキョトンとした顔で眺める。
「どないしたんや工藤?」
「服部、お前もか?」
「“お前も”って――、まさかお前も同じ夢見たんか?」
コナンはうなずいた。
「ああ――、なぜか俺が服部になっちまう夢をよ」
「そらけったいやなあ。二人そろって同じ夢見るなんてなあ」
平次は少し首をかしげて、そして言った。
「ま、単なる偶然やろ。あんな事ホンマにあるわけないしな」
「そりゃそうだ――。で、お前いつ帰るんだよ」
その会話を最後に、その話題は出なくなってしまった。
やがて、二人は歯磨きと洗顔を終え、洗面所を後にする。
その後ろ姿を密かに監視している小さな陰に気付く事はなく――。
「どうやら元に戻ったようね」
二人の後ろ姿をそっと見つめながら、灰原は呟いた。
「アポトキシンの解毒剤の臨床試験のはずが、まさかあんな服作用が出るとはね――」
実はコナンと平次が入れ替わる前日、阿笠の研究所を訪れたコナンに、灰原はこっそりとある薬を飲ませていたのだ。
コーヒーに混ぜて置いた薬は、最近試作品が出来上がったばかりの新薬。APTX4869――新一(コナン)と志保(灰原)を幼い姿に変えた毒薬の解毒剤の最新版の試作品であった。
ところが、期待した解毒作用は全く見られず、代わりに眠っている間に体の触れた者と精神が入れ替わるという、類稀な服作用をもたらしてしまったというわけだ。
「精神を入れ替える薬――。アイデアとしては面白いけど、実用化は無理ね。――ま、どのみち偶然の産物だから、もう二度とできないでしょうけど」
そう呟くと、灰原は静かにその場を立ち去った。
「工藤君――。貴方にはこれからも臨床実験に協力してもらうわよ。なにせ、症例は今の所貴方しかいないのだから――。まさか、危険な薬を私自身が試すわけにはいかないしね」
と、言い残して――。
知らぬが仏――。まさに今回の二人を象徴する言葉だといえよう。
これから先、コナンの身におかしな事が起きたら、それは灰原の人体実験の産物なのかもしれない――。
<了>
<あとがき>
4000HITのキリリク小説です。
お題は『コナンと平次が入れ替わったら』ということでしたので、このような感じに仕上げてみました。
といっても、これはSS仕様の不完全版です。
完全版にすると中編〜長編化してしまいそうな感じでしたので。^^;
というわけで、完全版はいずれ小サーででも連載する予定です。
その時までどうぞお楽しみに☆