「2アウトフルベース」


 カウントは3ボール2ストライク。正真正銘最後の一球。
 相手は最強の強打者。抑えられるかどうかなんて全く分からない。
 ひょっとしたら無残に打ち砕かれるかもしれない。
 だけど、逃げ出す事はできない。何があってもできない。
 今ここにいるのは自分の意思。自分で決めてこのマウンドの上にいるのだから。
 どうする? 何を投げる?
 思い切ってストレート? それとも意表をついて変化球?
 何を投げても打たれそう。だけど絶対にボールにだけはできない。いや、したくない。
 押しだしフォアボールじゃ、決意してマウンドに登った意味がない。
 力を入れて白球を握り締める。もう後戻りはできない。
 相手の打者がバットを構える。いざ、勝負の時。
 決めた。悔いの残らないように思いっきり放ってやる!
 大きく振りかぶって足を上げ、最高の一球を投げ放つ。
 これ以上ないくらい、ど真ん中の直球を。


「すっ、好きです! 私とつき合ってください!!」
 憧れの彼は野球部のキャプテン。
 数々の女子のボール(こくはく)を打ち崩してきた最強のバッター。
 そして、彼のバットに打ち返された白球は胸元に構えた私のグラブに優しく戻ってきた。
 舞い降る桜の花びらのような色に染まった、ハート型に形を変えて。


Written by 佐倉信輔


<あとがき>
 アオさんに贈ったSS。
 どベタ&ど直球な恋愛一直線的ストーリーです。


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