「SWEET ROOM」 でぃあ佐倉様
<2000HITおめでとうです☆ 佐倉様へ・アオより>
〜SWEET ROOM〜
涼しい風が開け放した窓から入ってくる。狭い部室は、すぐに過ごしやすくなるだろう。
今日はどうやら部長が来ないらしい。なんと平和だろうか。
この部の副部長である時田タケは、清々しい青空に柔らかで開放的な笑顔を向けていた。
そのように、彼が安心しきっていた矢先である。
バタバタドカドカと、隕石でも大量に降ってきたかと思われる音が廊下から聞こえてくる。
タケはハッとし、大きく溜息を吐いた。
その足音はやはり部室前で止まり、すぐに勢い良くドアが開く。
そしていつも通りそこには、今日こそ来ないと思っていた部長が、素晴らしい笑顔で立っているのであった。
「ねーねー! タケ、見てコレ!」
「…何スか部長…今日もやたら無駄に元気っすねえ…」
彼女がタケの目の前に、突然看板のようなものを突き出す。
それが顔にぶち当たるのを間一髪で避けたタケは、手渡された看板をしげしげと見つめた。
―2000HITおめでとうです☆
此処は『暇人無法地帯本部』。名前はパッと見、難しい漢字ばかりなので、何やら凄そうなのだが、それは見事な見掛け倒しである。
冷静に漢字の意味を辿って行けば分かるだろう。
早い話、この部活(私立校の自由な校風だからこそなんとか生きながらえている部活とは到底言えないもの)は、完璧なバカ部長率いる『馬鹿無法地帯』なのだ。
ちなみに部名の設立と命名は前部長で、昨年無事卒業。現在の部員数は部長・副部長のみで、二名だけだ。
秋山ミハル。それが、現在の部長の名前。同時に、少なくともこの校内一のトラブルメーカーの名前である。
「部長、なんすかこれ。2000HITって」
「そうだった、そうだった。それ、暗黒大王に届けてきてよ」
会話がかみ合わない上にハチャメチャな単語だらけである。
タケはどうやらこの雰囲気にも慣れきっているらしく、動じずに会話を続行した。
「だから、何が2000HITなんですか」
「バカね! 暗黒大王のモンスター倒した数よ! ったりまえでしょ!」
これも、常人には分かり得ない言葉だろう。
モンスターとは、現在この学校で流行りに流行っているオンラインゲーム、『スウィートキャッスル』のことである。
「甘い城」という砂糖でできた城には、この世で最も美しい姫が閉じ込められており、その城が溶け切ってしまう前に、勇者が城から姫を助け出すゲームだ。が、その間にはもちろんお決まりの『モンスター』が居る。一体倒せばそれが勇者のHPになる。そのため、一体を倒す事はこの学校で『1HIT』と呼ばれているのだ。
つまりミハルのいう『暗黒大王』は2000体のモンスターを倒したということになる。
「え! それ、すごいですね!」
「まったく、タケは流行りものもロクに知らないんだから。ほら、事情は分かったでしょ、さっさと暗黒大王のとこ行ってきて」
「…」
会話を引き伸ばそうと何をしようと、どうやら行くのはタケらしかった。呪詛の言葉を念じつつ、タケは「わかりました」と言いつけを承諾。
「行ってらっしゃーい」
「はい…」
結局涼しい部室は、ミハルに独占されたのであった。
甘い、甘い城。
僕はいつになったら、姫の所に出発する勇気を手に入れることができるのだろうか。
涼しい部屋を独占している、僕だけのお姫様。
わがまますぎて、誰も近づかないお姫様。
いつか僕と姫が結ばれたら、あの部室は僕らだけの甘い部屋。
<管理人より>
当サイトの2000HIT記念にアオさんより頂きましたお祝いSSです。
サイトヒット数とモンスターの撃破スコアをかけるとは、素晴らしいアイデアです。
ぜひ座布団を1枚進呈させていただきたいですね。(ぇ